第九十九回 名台詞「お前は泥を食った事があるか?」

2000年以降の特撮ヒーロー番組に対して、食わず嫌いをしていた。良くない、いけない、情けない事である。だから今後はちゃんと食してから選んで、少しでも減らしていきたいと思う。「食わず嫌い」というのは、「観てもいない」「よく知りもしない」「なのに嫌う」「なんとなく避ける」という事なので、特撮ヒーローに関わらず全ての創作(音楽・文学・映画・漫画・ドラマ・アニメ・料理・AV…エトセトラエトセトラ)及びその作り手・人間自体に対して、とてもとても失礼である。いいや、それ以前に「もったいない」じゃないか。本当は美味いもの、美味いかもしれないものを、知らないままでいるなんて。触らずにいるなんて。
だから触れてみよう。「めんどい」「どうせこんな感じだろ」と逃げるのは、よそうじゃないか。暇があるなら、「知り」に行こうや。行けば必ず、違う海が見える筈。違う海になる筈だ。少しは。いや、少しでも。

音源制作・発売準備が終わり、暮らしに僅かながら余裕が出て来たので、2002年のライダーシリーズ作品「仮面ライダー龍騎」と、2004年の戦隊シリーズ作品「特捜戦隊デカレンジャー」を、一気に全話ぶっ通しで観た。両方とも、以前から気になっていた(全シリーズの資料を読みふけって特に目をつけていた)のである。
結論を先に言うと、何かの病気の様にDVD漬けの毎日を終え、最早完全にハマってしまった。そして完全に憧れた。両作品とも魅力が随所にちりばめられていて、面白かった。しまいには、変身の出来ないジジ臭い自分が、最高にやるせなくなるのだった。「いいなぁ…」である。
※今更言うまでも無いから余談になるが、墨だらけのトンガリロックスターやヤク中ぶったヤリチンハンサムなんかよりも、各々の独自の特殊能力を駆使した必殺技を見せ付ける「ゴーグルタイプのマスク及びコンバットスーツを装着したスマートな戦士」の方が、百万倍かっこいいと断言出来るし、事実かっこいいに決まってるので、俺は(結局は幼少時から一貫して)なりたがってしまうのだ。あれだけには…どうしてもなりたい。

「仮面ライダー龍騎」。気になっていながらも敬遠していた理由(昭和のライダーに慣れ親しんでいた為に当然)、それは
●ジョーオダギリ扮する仮面ライダークウガ以降に定番となった「体つきからして強そうに見えない上に台詞棒読み気味なチャラめイケメンを何人も抜擢」が、不快
●「カメラが頻繁に、ライダーや怪人の着ぐるみ細部のシワシワ感をしっかり拾ってしまう事で安っぽさが際立ってしまい、スーパーの屋上でのヒーローショーみたいに見えてしまわなくもない、月9ドラマの様な映りの、全ビデオ撮り(昭和特撮にて徹底されていたフィルム方式の撤廃)」への、違和感
●「過剰なCG描写」への、違和感
●「ライダーらしからぬ設定と造形」に、違和感
●「カードバトル流行とポケモン流行の便乗及びその手法導入の軽薄さ」に、苦笑
●「ここ何年かの少年誌アニメ業界とベッタリ癒着してる図々しいレコード会社が押し付けて来ると同様の、特撮作品に全く合わない(仮面ライダー!っていう歌詞も一切出てこない)エイベックス系の糞ダサい主題歌」が、非常に不快
以上の六点である。
けれど、その「ライダーらしからぬ設定」が常軌を逸していた為に、惹かれたのも確かなのだ。(主題歌は本当に最後の最後までいけ好かないままでした。CGや造形にはすぐ慣れたし、カードを入れて戦ったり変身したりするのもすぐに憧れちゃいました。イケメンキャストに関しても、この「龍騎」に関しては主役の青年の演技やキャラクターは自然だったので、好きになれました。ちなみにイケメンライダー前2作「クウガ」「アギト」は主役の面構えが生理的に受け付けないので、特に「アギト」の奴は本っ当大っ嫌いなタイプの顔なので、まだどうしても観る気になれません…)
何しろこの「龍騎」、作品内に、勧善懲悪どころか「正義」自体が存在しない。「これが正義だ」というのを示さない。そもそも、いつものいわゆる「世界征服を狙う悪の組織」が出て来ない。じゃあライダーは何処の何と戦うかと言うと、「自分以外の12人のライダー」と、なのである(従来の「日本語で会話可能な怪人」の代わりに「会話も意思の疎通も全く出来ないモンスター」が一応出て来る事には出て来るのだが、あくまでそれらは邪魔臭い脇役)。つまりこの「2002年の仮面ライダー」のテーマ、最大のウリは、「ライダーバトル」すなわち「13人の仮面ライダーの殺し合い」なのである。
観れば分かる、と言うか観てもらうしかないのだが、このライダーの戦いにあるのは正義でも悪でもなく、只それぞれのライダーの勝手な事情・自分勝手な「欲」だけ。それぞれが十字架を背負っている…とか言っちゃえば聞こえは良いけども、要するにひたすらに「自分の為」。自己中と自己中のぶつかり合い。最後に一人生き残ったライダーには「何でも望みが叶う」という超豪華賞品がある(と、謎の主催者から詳しい説明なしで全員が吹き込まれている)ので、皆その賞品欲しさに、その為だけに、生き残る為に、自分以外を潰しにかかるのである。
ね?面白そうでしょ?実際面白いですよ。しかも、ライダーバトル主催者(こいつも実は自分の唯一最大の欲望の為にこの戦いを仕掛けている。自己中だらけの登場人物、その中でも最も病的に自己中な存在)は、何故だか「時間を戻す(起きた事をなかった事にする)」というとんでもない特殊能力を持っており(だからジョジョの六部っぽくもあるんだよね…終盤)、それゆえに物語の結末は少なくとも四通りはある(本放送・テレゴングで視聴者にラストシーンを選ばせた特番の二種・劇場版)。こういうのは、やっぱりずるいっちゃずるい(送り手は濁す事無く自信持ってちゃんと「唯一のラスト」を決めて提示して欲しい)し、観ていてモヤモヤするし、間違い無く子供には伝わらなかったと思うが、要するに視聴者に、「あなたの好きな終わり方を選べ」と提示している訳である(個人的には劇場版での結末が一番好き。説明が親切で唯一合点がいった)。
ちなみに13人中、この葉蔵が最もグッときたライダーは勿論ヒール、紫色の仮面ライダー「王蛇」です。見た目もキャラクターも大好きだし、芝居も声質もいい。完全に惚れた。「イライラするんだよ…」が口癖の脱獄囚が変身。喋り方も常に吐息混じりで、変身してもしなくても一貫してユラーッと動く(変身したら当然俳優とは別人の「スーツアクター」が演じてる筈なのに、それを感じさせない見事な「統一感」が王蛇にはある。他のライダーの何人かには、この点から決定的なブレを感じてしまう。変身後とのギャップを縮めるには、やはりイケメンなだけの細身のガキじゃ難しいと思う。特撮ヒーロー番組のこんな部分は、イケメン王子様目当ての馬鹿な視聴者どもはまるで見ちゃいないだろうから、そういうゴミ女どもからしたら別に気になりゃしない所だろうけどな…)。必殺技は今までにないスタイルのライダーキックで、可也の迫力(他のライダーの最終技もいちいちカッコイイけど王蛇のは特に好き)!彼が出てくると目が離せなくなる。今後、葉蔵へのフィギアのプレゼントはドキンちゃんではなく、この仮面ライダー王蛇にして頂きたい(大・中・小・材質・出来具合・一切問いません!)。部屋中に並べて、頻繁に手に取って遊びたい。それぐらいカッコイイ!唯一の欠点は、変身前の私服のセンス!(演じた俳優さんも実際ひいていた様だ)幾らコブラをモチーフにしたライダーだからって「上下とも蛇柄+フェミ男風の首輪」は…やり過ぎかと。
でも、あの衣装着なくちゃいけないとしても、俺はこの役やりたいです。イキイキと、なりきってこなしますよ。役作りの為だったらハイブリーチぐらいしますし、泥も食いますし、実弟をモンスターの餌にもします。だ・か・ら、変身させろー!貧弱で不釣り合いなライダーどもと戦わせろー!俺は変身前と変身後ちゃんと両方やってみせるぞ!

葉蔵の様な「昭和特撮ファン」「アンチ・イケメンライダー」の人で、やっぱり「龍騎」も未見の人は、まあここは騙されたと思って頂いて、ウィキペディア辺りで詳細を確認後、少しでも気になったら是非、観てみて下さい。やっぱり冒頭は特に「映像の質感」等に違和感の嵐かとは思いますが、浅倉(:仮面ライダー王蛇)登場ぐらいから段々と、続きが気になって気になってしょうがなくなる筈です。浅倉役を葉蔵がユラーッとやるのを、想像して下さい。もしくは、そういう同人誌を作って下さい。お願いします…

「デカレンジャー」大推薦!の話も、いずれしますよ。しますけど、両作品とも2008年の今更になって、こんな「売れないバンドマン」に大袈裟に推薦されるまでもない、知らない方がモグリ的な名作だとは思うんですが、あまりにのめり込んで、盛り上がってしまって、他に書く事浮かばない訳ですよ。鏡の前で変身ポーズ真似たり(※13人全員それぞれ違う)、しちゃう訳ですよ。しかも一日に何度も…


今週のおかず三品:
INCE INCE/SELDA
THE MOORISH IDOL/RAY MANZAREK
青い魚/金延幸子

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